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2011年06月04日

●サクラ大戦っぽいナニか2

なんかボチボチと進めて書いてたやつ。
少し溜まったので。
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「これで……うーむ」
 大神が案内されたのは、これから大神が生活する自室らしい。大帝国劇場の奥まった場所の二階にある洋室だ。近くには他の団員の部屋もあるので気をつけるようにと言われている。何を気をつけるのかは良く分からなかった。
 部屋の中にはベッドにテーブル、更には書斎机と一通りのものが揃っている。最近まで寮の相部屋を使っていた大神にとっては満足できて余りある部屋だった。
 そんな部屋にある姿見の前で、大神はネクタイと奮闘していた。
 大神に渡されたのはワイシャツにスラックスにベスト、そしてネクタイである。支給品として革靴まで用意されていた。
 洋装なら着慣れていたが、それでもネクタイだけは別だった。江田島ではシャツか襟詰めだった。どうにもネクタイを結んだ経験は少ない。
 だが、ここで悠長にしている時間は無い。部屋の外ではかすみが待っている。大神は額に汗をかきながら、どうにか形になる程度に結んだ。
「お、お待たせしました」
「ふふ、そんな急がなくていいんですよ」
 部屋から出ると、余程大神の慌てぶりが面白いのか、ころころとかすみが笑う。
「あら、タイが曲がってますね」
「いいっ、そうですか。おかしいな、さっき――」
 大神が言い終わらぬうちに、かすみはそっと近づき、大神の首下に手を伸ばした。ネクタイの乱れていた結び目を綺麗に直し、まっすぐになる様に整える。
 そんなかすみの行動に大神は固まる。
(この香りは――)
 かすみからは良い匂いがした。香水の類だろうかと大神は想像する。和装ながらどこか垢抜けている、大人の美人いう印象のかすみに、大神は見惚れてしまう。
「はい、これでバッチリですよ」
 かすみにポンと胸を叩かれ、笑顔も向けられる。
「あ、ありがとうございます!」
「もう大神さん。そんなに畏まらなくて良いんですよ」
「失礼しました!」
「ふふ……」
 大神の様子に、かすみは手のかかる弟の様な印象を持った。
「じゃあ、行きましょうか。とりあえず事務所へご案内しますね」


 サクラ大戦っぽいナニか 第ニ話


 一階の支配人室のほど近くにある事務所へと案内された大神は、何枚かの紙を渡されてそこで書類にサインをしていた。
 どうやらこの華撃団内部の書類は捺印では無くサインで統一しているらしい。印鑑を部屋に置いてきている大神としても手間いらずだったので、さらさらと万年筆で自分の名前を書いていく。
 これらの書類はどうやら大神の劇団員としての雇用契約書だそうだ。ただこれは表向きという事。実際には華撃団としての任務があり、給与も別らしい。表向きながら給与として三十円程も出るあたり、すこし大神の頬が緩んだ。
「はい、終わりました」
「承りました」
 大神の書いた書類をさっと手に取り、かすみは手早く処理をし、奥に立っていた黒子に渡してしまう。
(黒子? なんでこんな所に黒子がいるんだ?)
 先程通路でも見かけたが、まだ劇の練習なら分かるが、なぜ事務処理に黒子がいるのだろう。大神が首を傾げた所でかすみから声がかかった。
「では、大神さん――あ、丁度良かった。椿~、ちょっとこっち来てくれない」
 かすみは突如事務所のカウンターから手を伸ばし、事務所の端っこで荷物を抱えていた少女を呼び止めた。
「かすみさ~ん、私忙しいんですけど」
「だからこそよ。ほらこちら今日から入った大神さん。椿、大神さんに仕事の案内よろしく」
「お、大神一郎です。よろしく」
 どうにか硬くならない程度に挨拶をする。
「あ、私高村椿です。こんな格好ですいません~」
 椿、と名乗った少女は手に大量の荷物を持っていた。何かの入った箱を積み重ねて抱え、更に手には同時に紙袋も持っていた。
 それらの隙間からは冊子やら扇子なんてものまで見える。
 そんな荷物の隙間から、ひょこりと顔を出した椿は、どこか愛嬌のある可愛らしい少女だった。耳元で切りそろえられた髪、頬のそばかすも彼女の愛らしさを彩っていた。
 この劇場に来てからどうにも垢抜けている人物が多かったので、不思議と親しみが持てた。
「大神さん、今回の仕事については椿が説明しますので、手伝ってあげてください」
「了解しました」
 大神は椿に近づくなり、手に持っていた箱の山を奪った。
「あぁ、すいませんー」
「いえいえ、これくらい」
 とそんな事を言いつつ、大神は意外な程の重さに内心驚いていた。
(彼女はこんな重いものを持っていたのか……)
 大きさの割りに、嫌にズッシリと重かった。
「でわ付いてきてくださいねー」
 椿は手に紙袋を持ったまま、大神を先導するように歩き始めた。大神もよたよたしながら付いていく。
 どうやらロビーの方向に向かうらしい。先程と同じく幾人かの人間とすれ違いながら、椿はそれぞれと軽く挨拶を交わしていく。
「到着です」
 椿がそう言ったのはロビー横にある出店の様な場所だった。どうやら劇場の売店らしい。
「えっと、どこに置けばいいのかな?」
「あ、そうですね。じゃあこっちに置いちゃってください。ついでに商品の置き方も説明するので、お願いしますね」
「りょ……分かった。こちらこそ頼むよ」
 大神も椿との気安いやり取りに、自然と言葉が柔らかくなった。
 売店の裏手にあるスペースに箱を下ろし、その封を開けると――。
「これは、劇場の案内冊子か?」
 中には絵や写真がふんだんに使われている冊子がぎゅうぎゅう詰めに入っている。
(道理で重いはずだ。それにしても――)
 冊子が入ってそうな箱は他にも数個はあったはずだ。
「ちょっと多くないか?」
「何言ってるんですか大神さん」
 椿はけらけらと笑いながら、手を口に当てた。
「これでも少ないんですよ。千秋楽分をちゃんと取っておかないと中日(なかび)に完売しちゃいますよ」
「いいっ、そうなのかい」
 正直驚いていた。写真付きの冊子だから、おそらく十銭や二十銭じゃ聞かないだろう。それが数千部あって完売とはどういう事だろうか。
「去年に開演してから売り上げはずーっと右肩上がりですよ。伊達に帝都日報で紹介されてませんよ~」
 そういえば同期の友人が「帝都行ったら帝劇を見に行きたい」と言っていた事を思い出した。どうやら予想以上の人気らしい。
「あ、そこにすみれさんのブロマイドを置いてください。なんたってトップスタァですからね」
「すみれ君というと、この人だね」
 先程、あまり折り合いが良くなかった女性の写真の束を手に取り、売店のテーブル上にある他のを見ながら見様見真似で置いていく。
「でも、ブロマイドの種類が少ないな」
「一応、ブロマイドは花組さん限定って事になってるんです」
「花組?」
 そう言えば花火も何か花組と言っていた様な、と思い出す。
「はい。帝国歌劇団花組です。そうですね、この帝劇では舞台女優が組み分けされてるんですよ。その一番上が花組ってわけです」
「なるほど。でも少なすぎるんじゃ……」
 大神の目の前には四種類しかブロマイドが無かった。花火にラチェットにすみれ、そしてもう一人は茶色がかった長髪の少女だ。
「そうですね。去年は他に三名いたんですが、マリアさん……あ、以前の花組の組長だった人です。マリアさんは紐育へ移籍してしまいましたし。他の二人も今は出払ってるんですよ」
「紐育――それはもう一つの仕事と関係しているのかな?」
 大神は不用意だと思いながら、少し探りを入れてみる。対して椿も、周囲をキョロキョロと見回した後、声を潜めて答えた。
「後で説明があると思いますが、他言無用でお願いしますよ。マリアさんは〝ソチラ〟では花組隊長を務めてらっしゃいました。花組は演劇とトップであると同時に、〝ソチラ〟の主役でもありますから。その手腕を買われ、あちらでのもう一つの組織の立ち上げのために異動されました」
 説明がぼやけてはいたが、〝組長〟では無く〝隊長〟と呼んでいるので、恐らく任務の事を言っているのだろう。更には演劇でも組み分けが、帝都防衛の仕事の分担にも通じているらしい事が分かった。
「すみれさんはマリアさんを引き継いで花組の組長、そして隊長代理になっています」
(代理?)
 先程自分を『トップスタァ』と豪語していた少女を思い出す。どうやら演劇ではこの劇団の本当にトップらしい。だが、なぜもう一つの任務では代理なのだろう――。
「まぁ、そちらのお話はこれくらいにしましょう。それでですね、現在花組は四名しかいませんが、これでは幾ら何でも芝居が成り立ちません。そこで夢組と乙女組がいるわけです」
「夢組? 乙女組?」
 なんだなんだ、また聞きなれぬ言葉が出てきたぞ、と大神は思う。
「夢組は舞台の端役などを担当しておられる女優さん達ですよ。えーと詳しくは言えないんですが、彼女達にも本職があってですね……。あと乙女組は花組の候補生という所でしょうか。帝国歌劇団の舞台に立てる人間には、ある〝資質〟が欠かせませんから。それを持った人間を一から鍛えていこうという事ですね。彼女らは舞台だけで無く、売店を手伝ってくれたり、レストランの給仕をしたりしているので、お客さんも身近に感じるせいか、けっこうファンが多いんですよ」
「へぇ……」
 そんな話をしながらも、椿は次々と売店の準備を行なっていく。いつの間にかレストランのコックの姿をした人が、お弁当を満載した箱を持ってきたりして、着々と棚は埋まっていった。
「えーとお弁当が三種類に、おにぎりまであるのか。それに扇子に写真立て、湯呑みにポスター……」
 椿に指示されるままに荷を解いていくが、かなりの種類があって大神は混乱を隠せなかった。
「あ、もうこんな時間。じゃあ大神さん、お仕事の説明をしますね」
「え?」
 てっきり売店の手伝いが仕事だと、大神は思っていた。
「はい、これお願いします」
「これは……ハサミ?」
 渡されたのはどこにでもある様なハサミだった。ハサミをにぎった大神の右手を、椿が手に取った。
「いいっ!」
「はい、ハサミを持って、こーやってチョキン、と」
 椿は手に持った何かの紙を、大神の右手のハサミで切った。そして切られた紙を大神に渡す。
「それで、この半券をお客さんに返せば終了です。わかりましたか?」
「これはもしかして」
 どうやら椿が仕事の実演をしてくれてたようだ。大神の手には『帝国歌劇団公演 椿姫の夕』と書かれた紙がある。
 大神にも今の仕事には覚えがあった。演劇や活動写真を見るときに入り口で行なうソレを。
「もしかして、俺の仕事とは」
「はい、『モギリ』ですよ。聞いてませんでした?」
 『モギリ』――いわゆる入場係。劇場などの施設で、入場券を半分にもぎる仕事である。
 ははは、と引きつった笑いを浮かべる大神。しかして人の適性とは分からないものである。大神は後年「自分の天職はモギリであった」と述懐しているのは別の話。

     ◆

 大神はふらふらとしていた。
 大帝国劇場の入り口にてモギリ係をしていたのだが、予想以上の人の多さだった。
 よもや二千人近い人数が押し寄せるとは思わず、この数十分の間、大神は休むことを知らぬまま入場券をモギリ続けた。
 もちろん大神だけでは手が足りず、いつの間にか件の黒子の格好をした人が立ち、三人体制で客をさばいていく。
 どうやら黒子がモギリをやるのは客も承知な様で、黒子がモギリをしている入場列は滑らかに進んでいった。反面大神の列は、仕事に不慣れなため滑らかとは言えず、客から不満の声があがる。どうにかしようとするも、急にモギる事が速くなる事もなく、額に汗をしながら必死に客を捌き続けた。
(これなら上官に怒鳴られてる方がマシだなぁ)
 慣れぬ客対応に、大神は肩を落としてしまう。嵐が過ぎ去ってなんのその、公演が始まるなりロビーから客の姿が消えてしまった。先程の喧騒は無く、ただ静かな空間だけが広がっている。
「おつかれさまです、大神さん」
「あ、高村君」
 振り返れば椿がいた。手にはラムネの瓶がある。
「本当は売り物なんですが、今日は特別です。どうぞ」
「あ、ありがとう」
 椿に渡されたラムネを大神は一口飲んだ。冷えたラムネが喉を通っていく。
「ぷはー、うまいな」
「ふふふ。あとこれは支配人からの贈り物です」
 椿に今度渡されたのは、先程まで繰り返し手に持った紙の様だ。椿は大神に紙を渡すなり、ハサミを取り出した。
「はい、チョキン、と」
 大神の手には『立ち見』の入場券だけが残った。
「今日だけの特別、だそうですよ。ほらほら行ってください。まだ開演して間もないから、ちゃんと見れるはずですよ。あ、扉の開け閉めには気を付けてくださいね」
 椿はぐいぐいと大神の背中を押す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は芝居に関してはさっぱり――」
「いいから、いいから。ほら静かにしないとお客さんに迷惑ですよ」
「うっ……」
 大神はそのまま客席へと押し込まれてしまう。
(まいったな……)
 客席は薄暗い。それでも、天井が高いことや奥行きもかなりのものだという事は分かった。広い空間には客席が整然と並んでいる。そして全ての席に客の姿があった。その客席の最後部と扉の間の空間が、どうやら『立ち見席』という奴らしい。
 ある者は腕組みをしながら、ある者は壁に背中を預けながら舞台をじっと見ている。
 広いながらも、人の多さによる熱気がむんとした。大神は思わずシャツの襟元を拭った。
(演劇なんて、俺はよく分からんしなぁ)
 実家のある栃木では、何度か興行に訪れた劇団による演劇なんかも見たことあるし、祖父に連れられて歌舞伎を見に行った事もあった。だがその程度であり、芝居を見たのなんて両手で足る程だ。
 そして特に演劇に興味があるわけでは無い、ましてやこんなに立派な劇場に、綺麗な女性の役者。大神には自分が場違いな気がしていた。
(なっ)
 大神は一瞬ぴくりと肩をすくめる。なぜなら周囲が一斉に溜息を吐いたからだった。
(何だ、何だ)
 観客の視線を追いかける様に、大神も舞台上を見る。
 どうやら主演である神崎すみれの登場の一幕の様だ。真っ白いドレスを着ながら妖艶な笑みを浮かべるすみれの姿は、舞台との距離があるはずなのに、不思議とはっきり見える。その隣にはすみれの友人として登場する花火の姿もあった。
(すごいな。きらきらと輝いてる)
 すみれの姿は、まるで別世界の人間の様だった。ただ舞台上で歩を進めるだけなのに、何か神聖なものを見ている様な気になる。
 そのまま話は進み、今度は金髪の男性役が出てくるも、どの役も女性が演じている様だ。
(ふむ、どうやらこの演劇は女性だけで行なうのか。歌舞伎とは逆だな)
 大神は得心しながら舞台を見続けた。
 『椿姫の夕』――原作は小デュマ、十九世紀の仏蘭西を舞台にした物語だ。高級娼婦であるマルグリッドと、青年であるアルマンのはかない悲恋を描いた傑作だ。マルグリッド役は神崎すみれ、アルマン役には夢組の女優が付いたらしい。現在花組には男役が不足している。
 今回の『椿姫の夕』は原作を改稿し、舞台は仏蘭西のままだが、帝都都民に受けるように様々な脚色が施されている。
 その一つが、巴里の社交界の晩餐の一場面だ。
「うわぁ」
 大神は思わず息を漏らした。
 原作の晩餐とは違い、演劇の鑑賞に変更されていた。舞台上では歌と踊りによるレビュウが行なわれている。劇中劇とでも言うのだろうか、マルグリッドが見に行った演劇を、そのまま舞台上でやっている様だった。
 様々な女性が窮屈そうなドレスを着ながらも、軽やかなダンスが披露される。それに合わせて賑やかな音楽が客席に広がる。天井からはきらきらと光の粒が舞い落ちた。
 そしてその中心には、スカートの裾を持って笑顔で踊る少女がいた。
(あの子は――)
 大神は先程のブロマイド整理で見た少女だと思い出す。
「エリカー!」
 客席から声がかかった。少女はそれに答え、踊りながら手を振った。
(あの子はエリカと言うのか)
 エリカの歌と踊りは抜群にうまいというものでは無かった。ただ人を引き寄せる何かがあった。舞台上では華麗な踊りと音楽が乱れ飛んでいるのに、何故かエリカに視線が引き寄せられるのだ。
 エリカが手拍子をすれば、観客もそれに合わせて手拍子をする。大神も知らず、手を叩いていた。
 舞台を見ながら体を揺すり、自然と笑顔が浮かび、心が躍った。
 ふと、エリカがバランスを崩した。
「あぁっ!」
 どうやら足元に溜まった紙吹雪に足をとられた様だった。
 客席から悲鳴があがるも、エリカは素知らぬ振りをしながら、転んだ体勢のまま踊りを続ける。そして、そのまま背後の踊り子達と同じ振り付けに、いつの間にか戻ってしまった。
(すごい)
 足元に溜まった紙吹雪が見えなければ、単なる演出だと思ってしまったかもしれない。
 エリカはそのまま最後まで踊り続け、舞台転換のための幕が下ろされた。
 舞台は続く。
 華やかなレビュウシーンから一転、今度はすみれ演じるマルグリッドの気高さに焦点が当てられた。残り僅かな命を知りながら、マルグリッドは必死に愛を貫こうとする。
 大神もそんなマルグリッドの有様に、心を奪われていた。手に持った半券をぐっと握り込んでしまう。
 青年との悲恋、様々な障害が二人の間を別つ。
 だが、マルグリッドの最後の時に二人は結ばれるのだ。
 周囲からすすり泣く声が聞こえる。
 大神も歯を食いしばり、じっと舞台を見続けた。
 マルグリッドとアルマン、最後の、そしてほんの少しだけ残された逢瀬。この時間がもっと続けばよいと、マルグリッドとアルマンだけで無く、観客全てもそう思った。
 舞台と観客が一体となっていた。
 マルグリッドの唇から漏れる、最後の愛のささやき。小さな声のはずなのに、この空間では強く反響していた。
 それに対し、アルマンは涙を零す。
 二人は結ばれる。
 そしてマルグリッドは逝った。
 ざぁ、っと客席に無音の風が吹いた。
 それは風では無く、色だったのかも知れない。
 椿姫の名に恥じない、真紅のドレスを纏ったマルグリッド。彼女の色が薄っすらと透けていく様な錯覚を見た。
 そして彼女の纏っていた色が、観客へと広がったのだ。
 マルグリッドの死を持って、舞台に幕が下りる。
 マルグリッドは一切動かない。そして彼女を送るように、客席から膨大な拍手が送られた。
 幕が下り、客席からぱらぱらと人が立ち上がった時、大神はやっと気付く事が出来た。
「あ……れ……?」
 大神はいつの間にか泣いていた。

 第ニ話 了。

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Arcadia投下時のあとがきっぽいもの。

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・売店
売店内の商品や、入場券の値段などの設定は
『ミュージカル サクラ大戦 ~花咲く乙女~』
のパンフレットを参考にしています。
ミュージカル自体は見たこと無いのですが、パンフだけは昔ローソンの通販で買いましたw
ラムネなんかもこの時代、普通に売ってた様ですね。
まぁアイリスの曲にもラムネの曲があるくらいですし、無くても『太正』って事でゴリ押ししてましたが。


・椿姫
オペラじゃなく、小説の方のネーミングにしました。
と言っても作者はオペラなんて見たことありませんが。
小説の「椿姫」を読んだのが十年くらい前なので、読み直そうと探しましたが見つからず。
震災の際に家整理した時、どっかで見かけたんだけどなー。
そのため、内容はかなりうろ覚えプラスwikiだよりで。
この太正12年というのが西暦では1923年。椿姫の舞台が19世紀中盤なんで、約半世紀以上昔の話なんですね。
私達が昭和中期の恋愛映画でも見てる感じなのでしょうか。良く感覚分かりませんでしたが。
そういうのも合わさりつつ、エリカの登場シーンも描くために良く分からない改竄をしています。


・黒子
サクラ大戦OVAの第一弾、桜花絢爛にて登場。
その中では、所謂劇場運営のキャラ不足を補うために、登場人物には見えない裏方として出てました。妖精の類かなんか?
この作品でも劇場運営に欠かせないモノ?達として出てきてます。
一応正体についても設定してますが、あと十話くらいすると分かるかもしれません。


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椿姫は本当に見つかりませんでした。
本当にどこに行ったんだか。
ちなみに舞台中、ラチェットがソプラノボイスで歌うシーンみたいなの入れるつもりだったんですが、エリカが目立たなくなるのでカット。
途端ラチェットは存在が消えた。


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