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2008年10月19日

●裸者と裸者

上下巻読了。
ふと本屋さんで「愚者と愚者」という本が目に入って、あらすじが面白そうなので買おうと思ったら、続き物らしいと知り、その前作「裸者と裸者」を購入。
ひさびさのスマッシュヒットでした。
惜しむらくは作者さん、打海文三さんは去年急逝したらしく、このシリーズが未完だとか。
これほどの作者さんの作品を、作者さんがいなくなってから知るなんて……orz

舞台は、世界の金融システムが崩壊し、世界各地で戦争が起き、日本に難民が押し寄せ治安が悪化、それに憂慮した軍部がクーデターを起すが、政府軍はアメリカの支援を受けつつ反撃、そして泥沼状態へ……そんな日本。
ロシアンマフィアが利権を巡り争い、軍部はそれぞれの地方で独立化、朝鮮やら東南アジアからの難民があふれ、男根主義を説く団体やらテロやら、性的マイノリティの差別に屈しない団体やら、在日米軍やら、もうカオスすぎるw
わけわからんくらいに各部勢力が混沌としている日本で、兄弟を養うために軍隊へ入隊する孤児カイトと、カイトに助けられた双子の月田姉妹が物語の主役。
それぞれが、上巻と下巻の主役になっている。

もうね、レイプやら犯罪やらが当たり前になってる世界で、どんどん成長していく主人公が淡々と描かれる様は目が離せない。
正義とか悪とかそういう薄っぺらさが無いんだよね。生きるため、誇りのため、そのために銃を取り戦場をかける人々。
戦争の停止やらレイプ禁止ってうたいながらも、戦費調達のため、大量のドラッグを流してる辺りが生々しい。
ほとんどの登場人物の背中に死の臭いを感じる危うさが、全ページに渡って感じられるが、だからと言って一方的に陰鬱で暗くなるかと言えばそうでもない。
上巻はカイトのビルディングロマンスとして、どれだけ昇っていくのか、それを追いかけたいがためにページ捲るのが止らない。下巻は下巻で月田姉妹の破天荒さがたまらないwパンプキンガールズという女の子だけの軍隊を作り、鬱屈としてる東京西部の混乱にAK片手に身を投じていく。しかも欲望のままに動く姉妹なもんだから、作戦成功したりすると、ホテルに入って美少年を1ダース寄越せって売春クラブに電話して、男も女も食いまくり、一晩で60回射精させたね、なんて平気で言うんだからすごい上にかっこいい女だw
そして、何よりこの作品を面白くしてるのが、登場人物達の独特の感性だと思う。
それぞれがモノを見、感じた事が端的にセリフで読み取れるが、それらの感性が僕には無いモノがあふれている。
「それは正しい世界のひっくり返し方だ」
マフィアの内部抗争で片方のボスの言葉に対する月田姉妹の一言。なんとなく言い回しが面白くて憶えてたりする。
正直、これからこの世界がどうひっくり返るのか楽しみでしょうがない。
未完、という事は知っているが、読まずにはいられない。
なわけで「愚者と愚者」読み始めるぜ!